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瞭に見てとれる。その意味で、他の総合政策学部や政策科学部に比ベコンパクトにまとまった学部という印象を受ける。政策科学関係の科目は、応用科目を含めても、全体を見渡して「公共政策論」「公共計画論」「福祉行政論」「環境行政論」ぐらいである。逆に、行政学や経営学関係は、かなり充実している。学生は3年次以降、行政学か経営学がどちらかに重点を置いて専門科目を履修することができるようになっている。したがって、慶應や立命館的なイメージで入学すれば、恐らく学生は政策系科目の少なさに失望するだろう。しかし、行政学や地方自治、経営学をかなり集中的に学ぶという明確な目的があれば、充実した大学生活をおくることができるだろう。
もう一つ特筆すべきは、一般教育科目や語学を重視する政策系学部が目立つなかで、熊本県立大学が専門科目を重視する姿勢を明確に示している点である。卒業に必要な単位は全部で139単位以上だが、そのうち専門科目が105単位以上で、語学・健康科学・一般教育科目は合計でも34単位にしか過ぎない。しかも、専門科目のうち、アドミニストレーション総論や政治の基礎理論など重要な科目は早くも入学直後の1年前期で履修する。逆に一般教育科目は1年から4年までの間に履修すればよい。語学も1.2年の英語8単位が必修なだけで、それ以上は選択必修である。せっかく文部省が大学設置基準を大綱化して、カリキュラムの自由化を認めたのに、本来、大学改革の先頭に立つべきはずの政策系学部が意外に保守的なカリキュラム編成に固執し、その結果、せっかくの政策科目の履修年次が主に2年次以降になってしまっている点が私の大きな不満であった。その意味で、専門科目を優先するカリキュラム編成に大胆に転換した熊本県立大学総合管理学部の試みを私は高く評価したい。残る課題は、政策科学系科目の充実であろう。
(5)関西学院大学総合政策学部
政策系学部のなかでも、今のところ最も新しく、設置されてからまだ2年しか経過していない関西学院大学総合政策学部は、相当異色の学部である。私は設置理念やカリキュラム編成を見て、果たしてこの学部を「総合政策学部」と呼ぶのが適切であるのか疑問を抱かざるを得なかった。学部の性格をもっと端的に示す名称として、「環境政策学部」もしくは「エコロジー政策学部」といった方が適切であったように思う。
関西学院大学が総合政策学部を設置するにいたった背景は、実学化への社会的要請、総合化への志向、情報化への対応、国際化の追求といったように、他の総合政策学部や政策科学部と大きく変わるものではなかった。だが、関西学院の出した結論は、学部の名称こ

 

 

 

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